(ちけいせいこうう)
【自然】
地形性降雨とは、大気中の水蒸気が山地斜面に沿って上昇し、上空大気で冷やされて飽和状態に達して降る雨である。「晴れのち曇り、ところにより雨」の予報は、平野部は晴れているが、海風や偏西風に流されて山地沿いでは積乱雲が発生し、山地斜面に沿って積乱雲が発達して雨になることを意味するものである。ネパール南部のダッカからミャンマーの海岸沿いで年間降水量が4000mmに達するのは、ベンガル湾からの南西風がヒマラヤ山系で堰き止められるための地形性降雨である。我が国でも、北太平洋高気圧の西縁に沿う南西風の風上側にあたる紀伊半島の尾鷲では、年間降水量が3000mmに達することもある。また、異なった気団が収束して起こる線状降水帯は、次々と積乱雲が発生して雨を降らせるバックアンドビルドタイプがほとんであるが、偏西風に流されて山地斜面で大気擾乱が活発となり、河川上流で大雨を降らせて下流の洪水を招くことがある。平成12(2000)年の東海豪雨は、矢作川の上流で地形性豪雨が発生し、中流域の豊田市に多大な被害をもたらした。かつて、河川上流域に降った雨による下流域の河川水位が上昇するまでに10数時間要したが、現在は上流域の森林伐採や開発によって地下への浸透量が減り、表面流出量が増したために短時間で増水するようになったため、避難が間に合わないことも多くなった
『新修豊田市史』関係箇所:23巻247ページ