(ちゅうせきていち)
【自然】
沖積低地は、完新世(沖積世)に形成された新しい地形面を示し、河川との比高があまりない土地をあらわすことが多い。主に河川の堆積作用によって形成された地形であり、現在も河川の営力が及び増水時には河川が氾濫し堆積が起こりうる地域である。市域では、主に矢作川に沿って分布がみられる再低位の地形面がこれにあたる。沖積低地には、自然堤防、後背湿地、旧河道といった微地形がみられ、比較的高燥で微高地である自然堤防に集落が形成されるなど、土地条件に応じた土地の利用が古くから行われてきた。また旧河道は、河川の人為的な固定化が進む以前に、盛んに蛇行を繰り返した名残である。沖積低地は沖積層と呼ばれる、最終氷期極相期以降、主に完新世に堆積した地層によって構成され、基底には沖積層基底礫層が分布する。その上位には、下部砂層が分布し、さらに海面上昇に伴って沈水する。さらに上位には、河谷が水没し、形成された内湾の堆積物で、シルトや粘土など軟弱な堆積物によって構成される中部泥層が分布する。中部泥層は海成の堆積物であり、貝化石などを多量に含むこともある。中部泥層を覆って、上部砂層が分布する。上部砂層は、主に河川によって内湾が埋積していく過程で堆積した地層であり、沖積低地の地表を形作る地層に続くものである。このように平野の沖積低地下にみられる沖積層には、寒冷な最終氷期以降、後氷期の温暖な時代にかけて堆積した地層が分布し、その層相から過去の環境の変化を読み解くことができる。
『新修豊田市史』関係箇所:23巻54ページ