頂相

 

(ちんぞう)

【美術・工芸】

禅宗における師僧の肖像を頂相という。師から弟子への教えの継承を重んじる禅宗においては、教えの継承を完了した際にその証明として、用意された師の肖像に師が自讃を付すことが、中国・唐時代頃より行われるようになった。頂相をめぐるこうした慣行は、来日僧や中国への留学僧によって日本にももたらされた。頂相では、曲彔と呼ばれる椅子に坐し、手には警策などを執る全身像で像主を描くことが一般的である。頂相はやがて、開山忌や、歴代祖忌などの儀礼に用いるために、像主没後の像も制作されるようになった。市域の頂相としては、鎌倉時代の作例として長興寺(長興寺)の無為昭元像、南北朝時代貞和5(1349)年の作例として同寺の太陽禅師像、室町時代の作例として妙昌寺(王滝町)の無外円昭像、江戸時代の作例として徳合院(東保見町)の任梁圓鏡像、永澤寺(篠原町)の道元像、医王寺(矢並町)の像主名不明の頂相が確認されている。

『新修豊田市史』関係箇所:21巻218・230ページ

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