鍔付短頸壺

 

(つばつきたんけいこ)

【考古】

頸部と胴部の境目の部分に鍔のような突線が巡る縄文時代の特殊な壺型土器。市域では平成3(1991)年に実施された稲武地区夏焼町の下り山B遺跡子種地点から1点出土し、平成8年に当時の稲武町教育委員会により町文化財(考古資料)に指定された(現、市指定文化財)。この鍔付短頸壺は、口径7.0cm・器高9.7cm・底径7.3cm・最大胴径14.0cmの大きさで、頸部と胴部の境に鍔のような突起が巡り、相対する方向に耳(把手)が付いている。頸部は無文で、鍔部下の胴部から底部にかけては、貼付隆帯による弧線と突起状の意匠が横方向に展開する形で施されている。本資料は縄文時代中期末の山ノ神式に属するものと考えられ、縄文時代後期初頭に東日本域から西日本域に向かって分布の広がりをみせた双耳壺と呼ばれる器種の最古段階に位置付けられている。用途としては、赤色顔料を入れた容器とか祭祀的な性格を有する土器などといわれているが、詳細は不明である。本資料は下り山B遺跡の第1号土坑の底部から正位の状態で出土しており、土坑の上部では礫や磨石の集石が確認されている。このため、埋葬遺構あるいは祭祀関連遺構であった可能性も考えられる。


『新修豊田市史』関係箇所:1巻71・131ページ、18巻624ページ