ツマグロヒョウモン

 

(ツマグロヒョウモン)

【自然】

雌の翅端が黒いのが名前の由来で、雄にはこの特徴がない(写真は雄)。通常、ヒョウモンチョウ類は一年・一世代であるが、本種は温度条件が合えば年に複数世代繰り返す特性がある。元来は南方系の種であったが、温暖化の進展につれて北上して、分布域を広げてきた。この様相はナガサキアゲハと同様である。幼虫の食草はスミレ類なので、それに恵まれれば急速に分布域が広がる。現在、市域の花壇でスミレ類の園芸品種パンジーやビオラが育てられている。この条件もツマグロヒョウモン分布拡大の要因となっている。温暖化・グローバル条件と花壇の花種選択・ローカル条件とが一体化して、分布拡大速度を規定した典型といってよい。本種の幼虫は、若いときには食草の葉裏で生活するが、成長すると葉から地上に降りて他の食草個体へと移動する。すなわち、「食べ歩き」をする。そのため、パンジー、ビオラが群生している花壇は、格好の生息・繁殖の場となり、幼虫もみつけやすい。夏が近づき、春花からの植え替え時にスミレ類の花壇を掘り返すと、本種の蛹をみつけることができ、一年複数世代交代の現場に出会うことができる。


『新修豊田市史』関係箇所:23巻494ページ