『帝範』

 

(ていはん)

【典籍】

『帝範』は中国・唐の太宗李世民(在位626~649)が貞観22(648)年に撰述し、皇太子(のちの高宗)に授けた書。唐初の名君、太宗が自らの体験をふまえ、帝王としての心構えを皇太子に諭した内容となっている。『帝範』は日本に早くから伝来し、藤原佐世『日本国見在書目録』には、雑家の部に「帝範二」と著録されている。天皇への進講に用いられるなど、帝王学の教科書として尊重され、鎌倉時代以降の古鈔本が多く残っている。猿投神社所蔵『帝範』は鎌倉時代の写しで、巻子装(写真)。巻上のみで巻下を欠く。本文のほかに、誰の注かは不明であるが、双行注がついている。この資料の来歴を知る上で、僚巻にあたる同神社所蔵『臣軌』の奥書が参考になる。それによると、この資料はもともと菅大卿在良(菅原在良。1041~1121)が鳥羽天皇(在位1107~23)に奉授した本の流れをくむ菅家伝来本であり、『帝範』の現存古鈔本中、最善本と称されている。国指定文化財。


『新修豊田市史』関係箇所:特別号34・100ページ

→ 猿投神社の漢籍『臣軌』