鉄製武器

 

(てつせいぶき)

【考古】

弥生時代の鉄製品の出土はごく限られているが、高橋地区広川町の南山畑遺跡において、鉄器加工に関連した県内最古の鍛造遺構とともに弥生時代終末期の鉄鏃3点が発見された点は貴重な事例となっている。古墳時代になると、鉄製武器類は古墳の主要な副葬品目となるため、出土事例が一気に増加する。鉄刀・鉄剣・鉄槍・鉄鉾・鉄鏃・刀子などの種類があるが、刀子の場合は、大型品を除きナイフとして用いられた可能性がある。古墳時代中期の直径30mの円墳である猿投地区井上町の井上1号墳からは、鉄刀・鉄剣・鉄槍・鉄鉾の優品が多数出土しており、被葬者の武人としての性格をよく反映している(写真:右端の鉄刀長89.3cm)。鉄鉾の出土例は多くはないが、市内ではほかに高橋地区の市塚古墳や挙母地区の池ノ表古墳でも見つかっている。古墳時代後期~終末期にかけて市域でも横穴式石室をもつ古墳の築造が急増すし、その多くに鉄刀や鉄鏃などの鉄製武器が副葬されている。6世紀前半の首長墳である挙母地区河合町の豊田大塚古墳では、馬具などとともに鉄刀4点、小刀2点、鉄鏃60点以上が出土している。古墳時代後期以降の鉄刀には、鍔(つば)や鎺(はばき)などの刀装具が伴う場合や、飾り大刀と呼ばれる金銅装などの装飾を伴った儀刀があり、市内では高橋地区渋谷町山ノ神古墳出土の三累環頭大刀が知られる。一方、上郷地区神明遺跡、高橋地区堂外戸遺跡や挙母地区梅坪遺跡、猿投地区新金山遺跡などの古墳時代~奈良時代にかけての集落遺跡では、竪穴建物跡、猿投地区新金山遺跡などから鉄鏃が出土する場合があり、それらは集落での祭祀に伴って供えられたと考えられる。


『新修豊田市史』関係箇所:1巻143・237・313・318・324・448・468ページ、2巻111ページ、19巻206・482・578・658・666・810ページ

→ 井上1・2号墳豊田大塚古墳南山畑遺跡山ノ神古墳