都市気温

 

(としきおん)

【自然】

都市気温とは、都市域の気温が郊外地域に比較して異なる温度になることであり、その要因としては都市内部の熱容量が大きいこと、市内における燃焼熱、細塵その他の煙霧層、気流の乱れなどが挙げられる。氷河地形のヨーロッパでは、戦略的なこともあろうが都市構造が放射状になっていて風向に関係なく都市大気を移流・拡散させる機能を持っている。我が国は島国で季節風が吹くだけでなく、海陸風や山谷風の局地風が大気浄化を果たしてきた経緯がある。しかし、近年の都市気温の上昇は、熱中症など人の命に関わるようになってきた。したがって、住み続けられる街づくり(SDGs)に向け、都市内部の熱容量を小さくするための緑化や透水層の復元、水帯による気化熱効果、自動車の排ガス規制、電動化、ビル風を利用した熱の拡散などがなされている。しかし、都市の規模や地形的位置によっても都市内の人工気候はまちまちであるが、30万都市では都市内外の気温差で表すヒートアイランド強度が4.0℃、緑被率30%が基準である。人口規模が200万人を上回る名古屋市が、人口の少ない豊田市とヒートアイランド強度が約5.0℃と同じなのは、名古屋市が伊勢湾奥に位置しているため、海風による都市気温の移流・拡散と気化熱効果が得られるからである。これに対し、豊田市の中心市街地は、盆地底部にあって海風前線地域に位置し、大気が溜まりやすく高温域の移流が十分ではないからである。この現象は、三河山間部に沿う岡崎、豊川、瀬戸、多治見でも同様である。ヒートアイランドは、都市内外の気温差だけでなく3次元的なドーム状の対流構造をなしており、都市の中心部が上昇気流域、周囲が下降気流域となる。ドーム内部は等温層、および逆転層からなっていて、都市内部の大気汚染物質や熱を閉じ込める役目を果たしている。ヒートアイランド強度はヒートアイランドの上限高度と「正」の相関にあるため、今後、都市中心部の上昇気流をいかに抑えるかが課題である。

『新修豊田市史』関係箇所:23巻135ページ