都市農業

 

(としのうぎょう)

【現代】

都市農業は、「市街地及びその周辺の地域において行われる農業」(都市農業振興基本法)を指す。都市周辺の農業は、第二次世界大戦前から都市近郊農業あるいは近郊農業と呼ばれ、消費地である都市への近さを生かして鮮度が求められたり、輸送コストが高かったりする農産物(野菜、花き、牛乳、卵等)の集約的生産を特色とした。しかし、高度経済成長期以降、近郊では急速な都市化によって、離農や兼業化、農地転用や不耕作農地の発生等がみられ、他方、市街地では農地が一部で残存してきた。これらが都市農業と呼称され、農産物供給、緑地、農業体験・食農教育の場、防災等の農業の多面的機能の認知とともに、農業は都市にあるべきものとされて都市農業振興基本法の施行となった。豊田市では、高度経済成長期以降、工業化に伴う都市化によって、離農や兼業化、そして農地の潰廃や転用がみられる一方で、都市化に対応した水稲作等の地域組織化のほか、平地農村北部の猿投や南部の上郷・高岡、戦後開拓地等を中心に商品農業生産の特産地が野菜や果樹等の園芸作物で形成された。これら園芸作目の展開では、地元消費人口の拡大や豊田市公設地方卸売市場開設等の流通体制の整備のほか、名古屋市への出荷を基盤とした。他方で、名古屋市や豊田市等の消費人口への近接性は、農業体験、レジャー農園・市民農園、産直・直売等を通じて、都市住民との交流を盛んにし、「地産地食」や生産者と消費者の連携等をもたらした。

『新修豊田市史』関係箇所:5巻221・231・436ページ

→ 「地産地食」都市と農村の交流