(どそう)
【民俗】〈人の一生〉
市域では、山間部から猿投・石野地区にかけての曹洞宗の地域で土葬が多かった。大野瀬(稲武地区)では地所を買うといって、6枚のお金を地面に置いてから墓穴を掘った。掘ったのは組の人で、喪家は一升瓶の酒と肴を持参した。この酒は穴掘り酒と呼ばれ、市場(小原地区)では2升で、残してはいけないことになっていた。墓地を掘ると古い骨が出てきたりして穢れを受けるため、伊熊(旭地区)では奥さんが妊娠している人は穴掘りができなかった。掘った穴に魔物を入れないため、大平(小原地区)などでは鎌をぶら下げ、埋葬後は魔除けとして墓に立てた。埋葬してできた土饅頭には、墓標の代わりに掘った時に出てきた石を据えるところもあり、田津原(旭地区)では枕石と称した。幸海(松平地区)、川面(足助地区)などでは、土饅頭の周りに葬具の竹を刺して先端を縛り、三角錐の囲いを作った。魔除け、獣除けといわれるが、死霊を封じる結界とも解釈できる。〈人の一生〉
『新修豊田市史』関係箇所:15巻658ページ、16巻600ページ