トックリ(結納)

 

(トックリ(ゆいのう))

【民俗】〈人の一生〉

結納は婚約成立の儀礼であるが、結納品を贈るのが一般化するのは昭和40年代以降であり、もともとは双方の仲人が一緒に酒を飲むことで結婚話が正式にまとまった。この儀礼をトックリ、酒入れ、決め酒、内緒酒などと呼んでいる。花園(高岡地区)では婿方の仲人が一升酒と重箱を嫁方に持参して嫁方の仲人と酒を飲み、婚礼の日取りなどを打ち合わせた。この酒を残すと縁起が悪く、話がまとまらないとされたため、飲み干して徳利をひっくり返し、残っていないことを確かめた。「トックリが転んだ」といえば結婚話がまとまった意味で、仲人が婿方に空瓶を持って帰り、「倒してきました」と報告することもあった。トックリが済むと結婚する2人が正式につき合うことができた。結納金や昆布、真綿、白髪(麻)などの結納飾りはトックリの後に贈られたが、やがてはトックリの時に持参するようになり、これら金品の贈呈が結納の中心的儀礼に置き換わっていった。〈人の一生〉

『新修豊田市史』関係箇所:15巻582ページ、16巻530ページ