トナリ 

 

(トナリ)

【民俗】〈社会生活〉

ムラの中では、どの家も相互に「トナリ」と認識して日常的に密接なつきあいをする家を有していた。桝塚東(上郷地区)ではトナリジンセキ(トナリ親戚)といって重要視されていた。トナリの関係は隣接する両側の家にとどまらず、固定的な数軒に及び、数珠のようにムラ中に連鎖する構造を持つ。隣接していればシマや組の範囲を超えてもトナリ関係を結んだ。転入した場合、近接した家にトナリつきあいを依頼し、近隣に転居した場合でも以前のトナリの関係を解消しないなど、ムラの中でも特別視されていた。トナリの中でも特に密接な関係を持つ家を小原北(小原地区)、黒田(稲武地区)ではイチドナリといっている。トナリは葬式、結婚、出産、法事、家の建前、農作業などのテツダイ、味噌やコンニャク作り、収穫後のカリアゲボタモチのやりとり、モヤイ風呂などのつきあいのほか、山間部ではオキモリオヤやトリアゲババサを依頼することもあった。〈社会生活〉

『新修豊田市史』関係箇所:15巻478ページ、16巻450ページ