豊田市矢作川研究所

 

(とよたしやはぎがわけんきゅうじょ)

【現代】

平成6(1994)年7月に第三セクター方式で設立。のち市営。平成2年に市は豊田市矢作川環境整備計画検討委員会を設置し、翌年9月にスイス・チューリヒ州とドイツ・バイエルン州にヨーロッパ近自然河川工法調査団を派遣。ヨーロッパの河川と矢作川水系の共通性を発見するとともに、“1つの川に1つの研究所”が必要との考えを得る。加藤正一市長は、研究所が市営でなく第3セクター経営であることと、市は資金を出すが経営の人材は民間から出すことを条件に研究所設立の準備を指示。平成6年7月に市・枝下用水土地改良区(現豊田土地改良区)・矢作川漁業協同組合(矢作川漁協)によって設立に至った。河川課が事務処理を行い、設立当時のスタッフは矢作川漁協から非常勤出向した事務局長と専任研究員のみであった。平成7年度から毎年シンポジウムを開催し、翌年度に『矢作川研究』を発刊。平成10年4月に研究員の常勤体制となった。平成15年4月からは市営にかわり、豊かな水量の維持・良好な水質の保全・流域住民に潤いとゆとりをあたえる河川環境を目指し活動していく。平成13年5月12日には、研究所を中心に河川の環境を守る運動を続けてきた官民11団体によって矢作川「川会議」が発足。実行委員会が矢作川宣言を提案した。平成14年の第2回「川会議」では「矢作川学校」のセレモニーが行われている。学校の運営母体である理事会と事業を推進する学校および事務局で構成され、事務局は研究所に設置された。河川環境や文化を守る人材養成と、川遊びを通じて健康な子供を育てることを運営の目的とした。小中学校などで始まっていた総合的な学習の時間や公民館活動への講師派遣、河川現場での子供の川遊び指導に携わる。研究所はそのほかに、矢作川天然アユ調査会・各種愛護会・矢作川水産資源保護調査会などの事務局を受け持ちつつ、幅広い調査・研究・実践活動を展開。平成8年設立の矢作川天然アユ調査会は、矢作川で釣りを楽しみつつ、魚類の科学的な研究にも参加したいという人々による一種の河川ボランティア団体であり、研究所の外郭団体的な存在である。同会の発足によって研究所は河川現場での調査能力を飛躍的に高めた。アユの不漁が続いた際には、研究所と西日本科学技術研究所が共同で天然アユ復活に取り組むこととなり、矢作川天然アユ調査会は研究の実働部隊として参加。平成15年4月1日、市と矢作川水産資源保護調査実行委員会の間で、矢作川水産資源保護調査事業の協定が締結された。矢作川流域の水産資源上重要な魚類などの調査研究を行い、保護施策を関係機関に提案することで矢作川の水産振興をはかることなどが目的。期間は1年。委員会は研究所のほか、矢作川漁協、矢作川天然アユ調査会、市役所産業部農林課で構成された。その後も研究所は、各種研究や調査、シンポジウムの開催、各種団体の運営に関わっている。


『新修豊田市史』関係箇所:5巻555ページ

→ 矢作川漁業協同組合矢作川の環境保全活動