(にがびゃくどうず)
【美術・工芸】
唐時代の中国で活躍した浄土教僧である善導の著作『観無量寿経疏』散善義に説く、極楽往生をめぐる比喩(二河譬)を絵画化したしたもの。『観無量寿経疏』に強い影響を受けた法然が開宗した浄土宗で多く制作された。二河譬とは、以下のような内容である。西を目指す旅人の前に、火の川と水の川が出現する。2つの川の間には4~5寸ほどの白い道があり、西を目指すにはこの道を渡るよりないが、両側から火と水が道に降りかぶり容易に渡れない。背後からは盗賊や猛獣が迫り留まることもできない。そのとき東の岸で励ます人と西の岸から招く人があり、旅人は意を決し西へと渡り、難を逃れたという。旅人の留まる岸辺は現世、西の岸は阿弥陀浄土、東の岸から励ます人は釈迦如来、西の岸から招く人は阿弥陀如来、火の川、水の川、盗賊や猛獣は仏道を妨げる瞋恚と貪欲、欲望、白い道は往生を願う心の比喩とされ、二河白道図はそのさまを比喩混じりで描く。近代以前の二河白道図としては、市域では浄土宗鎮西派の広昌院(力石町)に、非仏画系の絵師により江戸時代末期に制作された紙本のものが知られる。
→ 浄土宗の絵画