農業法人

 

(のうぎょうほうじん)

【現代】

株式会社・合同会社等の営利を目的とした会社法人や農業生産の協業によって共同の利益の増進を目的とした農事組合法人で農業を営むもののことを指す。農業の法人経営は、昭和37(1962)年に農業協同組合法改正による農業組合法人と農地法改正による農業生産法人が制度上認められて可能になった。農業生産法人は、農地を所有して農業を営む法人であり、平成28(2016)年4月の農地法改正以降、農地所有適格法人と呼ばれる。他方、農地を所有せず、貸借等によって農業を営む農業法人は一般法人とされ、平成21年12月の農地法改正施行によって、企業等の農業への新規参入が容易になって増加した経緯がある。この結果、農業法人は、農業経営体が減少する中で、会社法人を中心に増加してきた。農業経営の法人化は、経営管理・能力や対外信用力の向上、人材や雇用確保による経営発展、農業従事者の福利厚生の充実、経営継承の円滑化、税や融資による優遇等をメリットとして、地域農業の担い手として政策的に期待されている。豊田市では、水稲等の土地利用型農業における農業生産組織の法人化が高岡地区で昭和40年代に水稲の受託集団(中甲・若竹)の組織化のなかでみられ、それ以降も上郷地区(桝塚会・和会営農)や挙母地区(逢妻)で設立された受託組織が法人化されていった。これらは、農地を集積させて米麦・大豆作等の大規模経営を行い、豊田市における土地利用型農業の担い手に発展するとともに、環境保全型農業の導入や都市住民の農作業体験などの交流でも主要な役割を果たしてきた。このほか、石野や松平地区の集落営農組織も農事組合法人となり、全面受託を行って地域の農地を維持している。他方、平成21年の農地法改正以降、企業の農業参入による農業法人の設立が、豊田市でも住友化学グループによる遊休農地を生かしたトマトの施設栽培や地元建設会社による観光農園併設の果樹園開設でみられた。

『新修豊田市史』関係箇所:5巻228・421・573・589・718・722・734ページ

→ 企業の農業参入農業生産組織