(のうちてんよう)
【現代】
農地を住宅や工場用地等の農地以外の目的に転用することを指す。農地法による農地転用許可制度で規制されている。農地の所有者が自己のために農地を転用する農地法第4条転用と、転用するために所有権の移転や賃借権等の権利設定をする同第5条転用がある。農業振興地域内の農用地区域内では、転用が認められず、生産性の高い優良農地(土地改良事業後の集団農地)も原則不許可となる。市街地内の農地や小集団の土地改良未整備農地は許可対象であり、市街化区域内の農地は、届出によって転用できる。農地転用は、農地の利用集積や効率性の阻害要因であり、抑制が課題となっている。豊田市の経営耕地は、昭和35(1960)年まで増加した後、昭和45年までに1500ha、その後の5年間でさらに1500haを超えて減少した。その減少は、昭和45年まで工場用地への農地転用が、次いで住宅用地の転用が盛んに行われたことによる。これは、戦後開拓地に代表される市中心部に近接する農地が本市の工業化・都市化の舞台になったためである。農地転用圧力の高さと農地を財産的に所有する農家の増加により、豊田市では農業振興地域内の農用地区域の指定が遅れ、その面積もすでに土地改良等が施工された地域の割合が高いという特徴があった。バブル経済以降、農地転用は、その他の施設や社会基盤の整備に向けられるものが多くなった。なお、中山間地域でも、地価の安さや自動車利用に至便な地区の農地が小団地の住宅地や小規模な工場用に転用された。平成に入ってからも、農地転用は市南部の上郷・高岡地区を中心に行われ、とりわけ、高岡地区において農地法第5条の転用が多くみられた。この過程で、基盤整備された優良農地が、農業とそれ以外の賃料差に基づく経済的な転用の圧力の高さとともに、土地改良によって形を整えられ造成しやすいこともあって賃貸借によって転用されて農業基盤が失われる事例がみられ、全国同様に農地転用の抑制が課題となった。
『新修豊田市史』関係箇所:5巻221・416・446・569・719ページ