機織り

 

(はたおり)

【民俗】〈衣生活〉

昭和20年代まで、女性は農閑期には家で機織りをした。うち織りの反物は、織り方にむらがあるが、厚みがあって暖かく丈夫で、動きの激しい仕事着や子どもの着物に適していた。数色の木綿糸を使えば縞や格子に織ることもできた。縞は経糸たていとと緯糸よこいとの量や配色が難しかったので、自分で織った端切れや知人に貰った布を帳面に張り付けて縞帳を作り、見本にしていた。経糸と緯糸のすべてを自家製で織る人もあったが、糸の太さにむらができ、ちぎれやすくなるので、経糸のみ購入する人が多かった。機織りの手順は以下の通りである。①糸の準備。自家製の場合は、秋に白い綿花を摘み取り、綿繰り機にかけて種を取り去る。近所の綿打ち屋で綿の繊維をほぐしてもらう。筒状にした綿を糸車にかけてよりをかけて紡ぎ、カセにして染色をする。②木綿糸は織る前に糊づけをする。糊は小麦粉で作る。糊が強すぎると織りにくく、薄いと糸が切れてしまうので加減が難しい。③整経。1反分に必要な長さと本数の経糸を整える。カセクリにカセをかけて1反に必要な数だけ糸枠に堅く巻きとる。経台を用いて経糸を棒に順にかけていく。筬おさ通しをする部分は 8 の字になるように糸をかける。経糸の必要本数は太さによって異なり、織り上がった布の見た目や丈夫さに影響する。④整経した経糸を 1 本ずつ綜絖そうこう (経糸を上下に分ける部品)と筬(経糸を揃え、緯糸を押し詰めるための櫛の歯状の道具)に通す。⑤経糸はチキリ(布を巻き取る棒)に固定する。⑥緯糸は管くだに巻いた糸を杼ひに固定しておく。⑦機織りをする。踏み木で綜絖を動かし、経糸を上下させて経糸の間に隙間を作る。杼を通して緯糸を渡し、筬を引いて緯糸を打ち込む。この作業を調子よく繰り返す。長興寺(挙母地区)の話者は、「1 日中織ると 2、3 日で 1 反織ることができる。杼のやり具合で速度が変わる」と述べている。〈衣生活〉

『新修豊田市史』関係箇所:15巻280ページ、16巻273ページ