(ヒートアイランド)
【自然】
ヒートアイランドとは、都市部の気温が郊外地域に比較して相対的に高くなる現象で、その形成要因は(1)市内における燃焼熱、(2)細塵その他の煙霧層、(3)市内の建造物による気流の乱れ、および(4)建築物の構成物質によるものとされている。現在、我が国ではヒートアイランドが暑さや熱中症の元凶とされているが、ヨーロッパでは古くから研究がなされてきた。これは、都市内部に停滞する大気汚染対策としての研究で、ヨーロッパの都市は大気が流れ出しやすい都市構造となっている。都市内部に大気汚染物質が溜まるのは、ヒートアイランドが地表付近の気温差(ヒートアイランド強度)だけでなく、対流現象を伴う三次元的なドーム状をなしており、内部は等温層、および逆転層が形成されているため、都市内部で排出された大気汚染物質が閉じ込められる鉛直構造になっているからである。ヒートアイランド強度は、都市の規模によっても異なるが、我が国では人口が30万人を超えるとヒートアイランド強度が急激に強まることが明らかにされている。これは、都心部に熱容量の大きな高層建築物が集積し、郊外地域との気温差が増すためである。我が国の中都市における平均的なヒートアイランド強度は約4.0℃であるが、大都市の東京では12.0℃、大阪では7.0℃である。人口200万人を上回る名古屋市は5.0℃前後である。これは、都心部の官庁街が電線の地中化により、三次元的な緑被率が高いために上昇気流が抑えられ、ヒートアイランドの上限高度が抑えられているためである。現在では下降気流域にあたる周辺部に高温域が出現するようになった。豊田市は、市域全体では三河山間部での緑被率が高いため、都心部とのヒートアイランド強度は9.0℃に達するが、都市中心部とその周辺部との気温差は約4.0℃である。東海地方が猛暑日になるのは、上層の大陸からの南アジア高気圧と中層の北太平洋高気圧が日本付近で合体して乾燥断熱効果が増すためで、近年はその効果が増してきた。特に盆地的要素をもつ豊田中心市街地は、日中の最高気温が名古屋市を上回る暑さが出現するようになった。これは、南高北低型の気圧配置で吹く西寄りのフェーン現象によるもので、風上側の名古屋からの高温大気が運び込まれ、盆地的要素をもつ豊田中心市街地に停滞するからである。特に、日中は矢作川に沿って吹き込む海風前線地域にあたり、高温・高湿、および無風になりやすい。したがって、日中の12時前後のヒートアイランド強度は7.0℃に達している。しかし、高温域は時間帯によって挙動しており、午前中は南部の若林東町周辺、および陣中町を中心とする中心市街地に現れるが、最高気温出現時には四郷町に移動する。これは、盆地底を流れる海風前線の北上によるものである。西寄りの風が弱まる日没後は、梅坪町、および平井町付近で海風と山風による局地不連続線が形成され、盆地底部を中心に高温域が形成される。したがって、日中は市街地北部と南部で最も気温が上昇するが、夜間から早朝にかけては中心市街地の不快指数が高まる傾向にあり、屋内においても温度管理が重要である。
『新修豊田市史』関係箇所:23巻135・140・149・154・160ページ