ヒクサ山

 

(ヒクサやま)

【民俗】〈環境〉

採草のための山。柴草を刈って天日で干したものをヒクサと呼び、かつては田畑の肥料や牛馬の飼料として貴重であった。このため、木を伐って草地を維持していた山がヒクサ山である。たいていは奥山の共有地であり、市域山間部ではクサカリヤマ(草刈り山)、シバカリヤマ(柴刈り山)、ヒクサヤマ(干草山)などと称した。綾渡(足助地区)では「八月刈り」といって、クリやクヌギの小枝、ススキやホンガヤの若草などをその場で円錐形にして干し、これをニゴ・スズミ・ボウシと呼んだ。天日で干したヒクサに対し、刈り取って間もない草をナマクサ、アオクサと呼び、これらはヒクサ山ではなく、田に木陰ができないよう、田のそばの山の木を切って設けた草刈り場で刈った。市域ではオオグロ(大隅)、クサカリバ(草刈り場)、シバヤマ(柴山)、ヤマグロ(山隅)、ヤマノコシ(山の腰)、カゲキリ(陰伐り)などと呼び、近接する田の所有者に採草の権利があった。〈環境〉

『新修豊田市史』関係箇所:15巻32ページ