ヒジ(葬式の食事)

 

(ヒジ(そうしきのしょくじ))

【民俗】〈人の一生〉

葬式の食事をオヒジ(非時)、オトキ(斎)と呼ぶ。黒塗りの本膳で供するのが基本で、そのための膳椀をムラやイットウで所有していた。市域山間部では、オヒジには厚揚げやヒリョウズがつきもので、特別に豆腐屋に作ってもらった。市場(小原地区)ではお平にヒリョウズ、お坪にヒジキ、直にウズラ豆を盛り付け、飯と味噌汁を並べた。大量の白米が必要となるため、年寄のいる家では葬式用の米をとっておいたとされ、不幸があればすぐに精米に行った。大多賀や下佐切(足助地区)などでは会葬者が米1升を香典として持ってきたので、これを使った。調理の場は隣家や親戚宅を借りることが多く、松平(松平地区)では外に石積みのクドを築き、ハソリで飯や汁を炊いた。葬式の食事には「割り切れる数ではいけない」(簗平・小原地区)、「家のものは死んだ人が持ってゆくので自分の家の味噌は使えず、店で買ってきた」(伊熊・旭地区)などの言い伝えがある。〈人の一生〉

『新修豊田市史』関係箇所:15巻649ページ、16巻594ページ