（びゃくだんぬりなんばんどうぐそく）
【美術・工芸】
胴高45.4cm 冑鉢高さ25.8cm。渡辺守綱が徳川家康から拝領したと伝えられた具足（写真：徳川美術館提供）。南蛮胴具足は当世具足の一種で、南蛮貿易によって舶載された西洋甲冑の鉢や胴に和風の𩊱や草摺などを取り付ける等の改造を施した鎧である。またそれを模して作られた鎧もあり、本具足はその後者とみられる。冑は1枚の鉄板を正面正中の位置で接着する。冑鉢の下方部分を折り曲げ、眉庇と鉢の外周囲に鍔を造り帽子形に仕上げ、金銅製の月輪形前立を付属する。胴は左脇を蝶番で繋ぎ、右脇を引合せる二枚胴で、表面全体を白檀塗りにしている。胴正面は鳩胸形で正中に鎬筋を付け下部が垂れ鼻のように尖る。この下部の尖りは西洋甲の特徴である。また首を守るための逆三角形の満智羅も付属する。草摺は6間5段下りで、一の段から四の段までは鉄の切付札を、菱縫板は革の切付板を使用し、表面は白檀塗りで裏面は黒漆を塗っている。守綱寺に具足姿の守綱像（2幅）が伝わっている。これをみると草摺の威糸を緑青色で表現しているが、現在の具足の威糸は啄木糸である。時代の経過で劣化したため取り替えられたのであろうか。このほか、半頬、籠手、脇当、佩楯、脛当も完備している。付属品として、金地に一文字三星紋を描いた手桶や、手桶や家紋などを描いた旗指物、守綱が使用したとみられる衣服などがあり、状態よく遺されている。
『新修豊田市史』関係箇所：21巻389ページ