(ヒヨトリ)
【民俗】〈農業〉
農作業(主に田植え)の手伝いを交換労働ではなく有償で行ったり、有償での短時間の労働のことをヒヨトリ、ヒヨウ、チントリなどと呼び、従事する人のことも「ヒヨトリさん」と呼んだ。田植えのヒヨトリは戦前からあったが、交通手段が発達してきた昭和30年代頃から盛んになった。市域山間部の人が平野部やほかの地域へヒヨトリに行くことが多く、これは地域ごとに田植えの時期が違っていたためで、山間部の農家にとっては貴重な現金収入源となった。例年同じ地域、同じ家に馴染みになって出向くのが通例で、集団で出向くことは多くはなかったが、農協などが斡旋し、地域でバスを仕立ててヒヨトリに行くこともあったという。総じて遠方から出向いたヒヨトリは「人扱いされなかった」といい、夜明から暗くなるまで休む間もなく働いた。一方、他地区の様子を知るのに役立つこともあり、子どもには親が町の土産を買って帰ってくるのが待ち遠しかった。〈農業〉
『新修豊田市史』関係箇所:15巻147ページ、16巻83ページ