フェーン現象

 

(フェーンげんしょう)

【自然】

フェーンはヨーロッパアルプスのチロル地方で吹く熱風のことで、雪解けの季節に吹くことからスノーイーターとも呼ばれている。また、ハンブルグ気象台では、フェーンと健康に関する情報を世界で初めて流し、アウトバーンでの交通事故との関係についても報じられている。これは、フェーンに伴う強風でハンドル操作を誤ったものではなく、急激な気温上昇による精神的な面での事故が原因である。我が国ではフェーン現象として知られているが、これまで記録的な暑さを記録した要因はフェーン現象によるものがほとんどである。フェーン現象は、山地の風上側では湿潤断熱減率(-0.5℃/100m)で気温が低下して飽和状態に達して雨を降らせ、風下側では乾燥した大気となって吹き下りる現象で、乾燥した大気は乾燥断熱減率(1.0℃/100m)によって気温が上昇する。したがって、風上側の地表付近の大気が20.0℃だとしても、2000mの山岳地を越える大気は風下側では30.0℃に達することになる。東海地方が夏の暑さで知られているのは、舌状に張り出す北太平洋高気圧の縁辺部に沿う南西よりの風が風上側の鈴鹿山系を越えてフェーン現象をもたらすためである。豊田市南部の若林東町、および上郷町付近では、フェーン現象吹走時において市域で最も気温が高くなる。これは、大都市名古屋からの熱源が移流してきているためであり、地球温暖化による上層気圧場の変動によって夏型気圧配置が南高北低型の占める割合が増し、東海地方はフェーン現象による高温化が増してきているからである。したがって、日中の中心市街地の気温を上回ることも少なくない。

『新修豊田市史』関係箇所:23巻99・124・128・133・142・153・157・161ページ