仏教版画

 

(ぶっきょうはんが)

【美術・工芸】

古くは印仏や摺仏などの形で作善の行として、護符として、仏像内の納入品として制作されてきた仏教版画は、室町時代頃には大型のものが手彩色されるなどして軸装され絹本や紙本の手描きの仏画のより安価な形として流通するようになった。市域での傾向としては、江戸時代以降の開版と思われるものがほとんどで、画中刊記により開版時期の判明しているものとしては弘願寺(和会町)、徳念寺(駒場町)の選択集十六章之図が正徳4(1714)年と最も古い。両寺のものは同版で、同版と判明しているものには他に慈眼寺(羽布町)、慈眼寺(杉本町)、増光寺(万町町)、増光寺(小渡町)の仏涅槃図がある。主題としては仏涅槃図が5例、釈迦三尊十六善神像が4例、阿弥陀三尊来迎図および青面金剛像が3例と多い。他に善光寺如来像、無量寿経変相図、当麻曼荼羅といった阿弥陀信仰に関するもの、役行者前鬼後鬼像、吉野曼荼羅といった修験道に関するもの、弘法大師像、道元禅師像、道元絵伝、法然絵伝、親鸞聖人像といった祖師崇拝に関するものがよくみられる。画家名は判明しないことが通例だが、高月院(松平町)の念仏行者現生護念之図が北邑桃渓筆、最光院(日下部町)の往生要集絵が松本柳岳筆と、まれに筆者が判明するものもある。

→ 釈迦三尊十六善神像善光寺如来当麻曼荼羅仏涅槃図法然絵伝親鸞絵伝来迎図