(ほうおんこう)
【民俗】〈信仰〉
浄土真宗諸派で、宗祖親鸞の忌日(旧暦11月28日)前後に開かれる法会。本山で行われる報恩講を特に「御正忌報恩講」といい、末寺の住職や門信徒はこれに参詣すべきとされている。市域で最も多い真宗大谷派寺院の本山である真宗本廟(東本願寺、京都市)では11月21日~28日、真宗高田派の本山である専修寺(三重県津市)では1月9日~16日が「御正忌報恩講」となっている。そのため、市域の寺では、こうした本山の日程と重ならないよう、その前後に報恩講を行うのが通例であり、これをオトリコシ(お取り越し)あるいはゴインジョウ(ご引上)という。大河原町(足助地区)では、町内の説教所で11月に報恩講をしている。説教所には大河原の各家が檀那寺としている石野地区の如意寺(力石)、智誓寺(富田)、松興寺(松嶺)の大谷派3か寺のうち、いずれか1か寺の住職が毎年交代でお勤めに来てくれ、門徒とともに正信偈を唱和している。報恩講では本尊の前にオケソク(お華束)と呼ばれる、平たい米粉餅を幾重にも重ねて盛ったものを飾るところもある。吉原(高岡地区)の教照寺(大谷派)では、報恩講に先立ち、報恩講で供えるオケソクの費用を檀家総代などの役員たちが各檀家を廻って集めている。報恩講が終わると、オケソクは各檀家に配られる。ほとんどの寺院では、報恩講の際、午前1回、午後1回の僧侶による法話があり、その間にヒジ(非時)やオトキ(お斎)と呼ばれる法要時の食事が振舞われる。白飯あるいは人参やゴボウ、油揚げの入った味飯と味噌汁、野菜の煮物などが出る。こうしたヒジ(オトキ)の準備は、前日や当日の朝早くから門徒女性が中心となって行っている。報恩講は子どもにとっても仏と縁を結ぶ重要な機会であり、「子ども報恩講」が催される寺院もある。下和会(上郷地区)の超願寺では報恩講前日に「子ども報恩講」が行われ、子どもたちが導師について正信偈を読んでいる。〈信仰〉
『新修豊田市史』関係箇所:15巻773ページ、16巻712ページ