ボラ(鯔)

 

(ボラ)

【民俗】〈食生活〉

西三河平野部では、昭和40(1965)年頃まで祭りのご馳走にはボラの煮付けが作られた。市域平野部でも、祭りの魚といえばボラだったが、山間部ではまったく聞かれない。ボラは出世魚で、この地域では20cmくらいまでをイナ、40~50cm程度をボラ、それ以上をトドと呼ぶ。ボラは竹を編んだものを大鍋に敷き、醤油と砂糖で煮付け、竹ごと上げて大皿に盛って客に出した。前林(高岡地区)では、大きな1匹を大皿に盛って取り分けて食べ、銘々にもイナの煮付けをつけたという。ボラは大浜(碧南市)から来る魚の行商人から買ったという地区が多い。ボラが祭りの魚になったのは、出世魚で縁起が良いとされたこと、三河湾で多く獲れて祭りの際の一斉需要を満たせたこと、値段が比較的安価であり、大型で見栄えがすること、などの理由が考えられる。しかし昭和40年代以降、沿岸部の水質汚染が進むと、ボラは臭い魚というイメージがつき、利用されなくなっていった。〈食生活〉

『新修豊田市史』関係箇所:16巻349ページ