(ぼんしょう)
【古代・中世】
寺院で法具として使われる釣鐘。撞木で撞き鳴らす。仏事の予鈴や朝夕の時報として用いる梵音具である。市域に関わる中世のものは5点が知られている。現存しているのは、まず文和2(1353)年11月に鋳造された市域南部の宇祢部郷の福林寺の鐘で、岡崎市の大樹寺に残る。また、三重県松阪市の来迎寺に現存する鐘は永禄11(1568)年に鋳造され、天正12(1584)年10月に足助八幡宮(足助町)に寄進されたという。明治の廃仏毀釈で流出したと考えられている。一方、現存していないが記録が残っているものとして、まず応永2(1395)年3月に幸福寺(畝部西町)に寄進された鐘がある。江戸時代に再鋳された鐘にその古銘が刻まれたのである。次に、応永32(1425)年4月に長興寺(長興寺)の梵鐘が鋳造された。これは京都の東福寺の記録からわかることである。最後に千鳥寺(千鳥町)には、永享元(1429)年10月に寄進された鐘があったという。明治時代になって改鋳される時にその旧銘が写されたのである。
『新修豊田市史』関係箇所:2巻653・655ページ、21巻358ページ