(ほんちょうもんずい)
【典籍】
平安時代中期に藤原明衡によって編さんされた漢詩文集。全 14 巻で構成される。さまざまな日本漢文の文体(記述スタイル)を網羅し、後世の文章作成の手本=文範として学ばれたため、中世の古写本が多く残っている。猿投神社には、鎌倉時代に書写された巻二が 1 点、巻十三が3 点、半切され聖教の料紙として使用されている巻六・巻十三の一部 1 点が伝わる。いずれも首尾や奥書識語を欠いた残欠本で、書写年代や伝来過程は不明である。袋綴本である巻二の紙背には熱田社領関係文書の案文が書かれており、巻六と巻十三の一部の裏には『摩訶止観釈義』が写されている。粘葉装の巻十三は、鎌倉時代初期の写しと考えられ、詳細な訓点を付している。巻子装の巻十三は、天理大学図書館に所蔵されている本の前半部分にあたる。なお、巻十三は仏事や法会を営む際に読み上げられる願文を中心に収める巻であることから、3点の写本が残されたと考えられる。国指定文化財。
『新修豊田市史』関係箇所:特別号53・107ページ
→ 猿投神社の国書