(まえだこうえん)
【建築】
平戸橋町(猿投地区)。豊田市民芸館に隣接した小高い丘陵地(洞ヶ峯)にあり、総面積6万6000m2で豊田市民広場となっている。公園の企画および設計・施工者は、前田栄次郎(1874~1961)であり、前田は独力で開設し、猿投村に寄贈した。昭和8(1933)年3月着工、同13年11月終了。工費は、村長の「我が郷黨に於ける功績概要書」には、工費7万5890円35銭とある。意匠は、京都市立美術工芸学校卒業の山田正晴が主に担当し、地元業者を採用し直営形式で施工された。正門を入ると、石段の参道(101段)があり、頂上には大きな聖観音菩薩像がある。階段両側には石造観音を置き、東・西に巡礼路が造られている。その円の内側には聖徳太子像、将軍塚、大山・東郷元帥像、道真の歌碑、格言の碑等の記念碑が建立され、宗教色・修身性の濃い自然公園となっている。なお、公園内の設置物は、戦時下の金属供出で、金属製の像や銘板はすべて失われたが、聖観音像は信仰の対象として残され、各種像の台座や前田記念堂等、石造やコンクリート造の建築・工作物は創建時のままで、往時を偲ぶに充分である。特に園内には石造の観音像は23尊で台座のみは5個、燈籠は53基で台座のみは12個が現存している。青銅製の聖観音像は巨大で、台の高さ25尺、像の丈は1丈4尺ある。この公園には、周辺地域の8自治区による「前田公園愛護会」が組織されていて、歴史の編さん、設置物の保存、園内の清掃・管理などを行っている。近代化産業遺産(経済産業省)認定。
『新修豊田市史』関係箇所:22巻532ページ
→ 前田栄次郎