(マムシ)
【自然】
クサリヘビ科マムシ属のヘビ。標準和名ニホンマムシ。北海道、本州、四国、九州に生息する日本固有種。体は茶褐色で太短く、背面に「銭形模様」と表現される円形の模様をもつ。背面の鱗には顕著な稜があり、このため外観として皮膚がガサガサして粗い印象を受ける。餌動物のレパートリーは広く、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類など脊椎動物全般を捕食する。顎の前方に注射器様の毒牙を持つ管牙蛇で、咬傷による死亡例が少なくない。ただマムシの側から積極的に咬みに来ることはまずなく、咬傷例の多くは、気づかずに踏みつけたり、草刈などで手を近づけたりしたこと、あるいは捕獲・捕殺しようとしたことによって発生する。日本本土に棲むヘビとしては唯一の胎生で、膜に包まれて産み出された幼体は産下後すぐに動き出す。幼体は尾の先端が黄色であること以外は成体と同じ色彩をもつ。市域では平野部から丘陵地、山地まで全域にみられ、特に水田周辺ではカエルを捕食しに来たと思われる個体をよくみかける。山地では渓流周辺の湿潤な環境でしばしば遭遇する。発見された場合には捕殺されることも多く、かつマムシ酒として生きたまま焼酎に漬けられることもあって、最も捕殺圧の高いヘビであると考えられるが、それにもかかわらず市域平野部の人家周辺では比較的よく生き残っている。特に夜間に水田周辺を調査する際には注意すべきヘビである。
『新修豊田市史』関係箇所:23巻551ページ