ミカワバイケイソウ

 

(ミカワバイケイソウ)

【自然】

シュロソウ科シュロソウ属の多年生草本。大型で高さは100~150cmほどになる。丘陵地の湧水湿地とその周辺に生育し、5月頃、茎を伸ばして円錐花序をつける。花は白色。冬に地上部は枯れる。亜高山帯に生育するコバイケイソウの変種で、氷期の遺存種とみられる。東海地方の固有種で、愛知県・岐阜県・三重県・静岡県・長野県にのみ分布する。植田邦彦の定義した東海丘陵要素植物の一つ。自生地の減少から、環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類、愛知県のレッドリストでは絶滅危惧IB類。市域では湧水湿地のうち20か所以上で確認されており、特に藤岡地区に多い。昭和の森には見事な群落がある。東海丘陵湧水湿地群のうち、矢並湿地(東湿地)にもみられる。それらの自生地では、シデコブシ、ノリウツギ、イヌツゲ、ミズギボウシなど湿地林の植物と同所的にみられることが多い。学名は、Veratrum stamineum Maxim. var. micranthum Satake。近縁種のバイケイソウも豊田市に分布しているが、これは東部の山間部を中心にみられる。自生地も湧水湿地ではなく、泥炭湿地や渓谷などであることが多い。バイケイソウの生育地としては、小原地区北町の市指定天然記念物や、足助地区の伊勢神湿地、稲武地区の面の木峠などが知られる。ちなみに「ミカワ(三河)」を和名に冠する植物種は、ほかにミカワシオガマ、ミカワチャルメルソウ、ミカワシンジュガヤ、ミカワタヌキモ、ミカワマツムシソウなどがあり、それらの多くが豊田市でもみられる。ただし、ミカワイヌノヒゲのように豊田市には分布しないものもある。


『新修豊田市史』関係箇所:23巻358ページ

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