南アジア高気圧

 

(みなみアジアこうきあつ)

【自然】

南アジア高気圧は、チベット高気圧の領域拡大に伴って使われるようになった対流圏上層部(100hPa面)に現れる高気圧であり、大陸上の夏の強い上昇気流によって対流圏と成層圏の圏界面付近に形成される背の高い高気圧である。これまで高気圧の中心はチベット高原付近であったが、季節進行とともに変化することが確認され、4月から5月にかけてはインドシナ半島北部、6月にはチベット高原付近、および7月にはイラン高原付近にまで領域が拡大し、8月には南アジア高気圧の東端が東アジアの北日本にまで達するようになった。日本列島付近は、南アジア高気圧の北を流れる亜熱帯ジェット気流が北東シフトしてリッジ(気圧の尾根)を形成し、中層の北太平洋高気圧が日本列島に張り出しやすくなった。このため、対流圏上層部の南アジア高気圧と中層部の北太平洋高気圧が鉛直的に合体し、下降気流による乾燥断熱減率によって日本列島の異常猛暑の原因となっている。特に、東海地方では岐阜県の多治見市、愛知県の三河山間部に隣接する盆地的要素を持つ瀬戸市や豊田市では異常猛暑になりやすく、豊田市が名古屋市よりも最高気温が上回るのは南アジア高気圧の東への張り出しによるものである。

『新修豊田市史』関係箇所:23巻122ページ