婿入り     

 

(むこいり)

【民俗】〈人の一生〉

婿入りは、婚礼当日、花婿が嫁方を訪れてもてなされる儀礼で、市域山間部ではウチアゲと呼ぶ。婿と嫁方の親戚との顔合わせの機会で、「婿の初客」と説明される。宴の途中で花婿が嫁方を辞してくるしきたりのところが多く、大平(小原地区)では花婿、オキモリ(仲人)のほか、花婿と同じ年頃の者がムコマガイとして参加した。嫁方の親戚と酒食をともにした後、婿方に戻った。婿入りを伴う婚礼を「ウチアゲ嫁入り」と呼び、立派な式を意味した。平野部でも婚礼当日の昼、同様に婿入りが行われた。矢作川の東の山間部では、ウチアゲの宴が終わった後、花婿一行が花嫁とともに婿方に赴くしきたりで、ウチアゲが夜中まで続けば嫁入りが翌日になることもあった。大野瀬(稲武地区)では「半端では駄目だ。丁度じゃないと」と称し、婿方から花婿、オキモリ、濃い親戚の3人が嫁方に赴き、嫁方から花嫁、オキモリ、濃い親戚の3人を伴って嫁入りした。〈人の一生〉

『新修豊田市史』関係箇所:15巻587ページ、16巻535ページ