(むらかみけちまきのや)
【近世】
村上忠順の蔵書を収めた書庫。忠順は膨大な書籍を購入や筆写によって収集していることで知られるが、娘婿である碧海郡新堀村(岡崎市)の木綿商人深見篤慶の資金援助によるものが大きかった。蔵書は国文学・歴史を中心に幅広い分野にわたっている。明治7(1874)年、蔵書の永久保存を目的として篤慶の援助を得て、頑丈な土蔵造りの書庫を建造し、「千巻舎」と命名した。また、千巻舎の由来について記し、文庫建立の功績と村上忠順の生い立ち、業績等を記載した石碑(写真)も建てられた。千巻舎に収められた蔵書のうち 2 万 5000 冊余りは、大正 3(1914)年に刈谷町の宍戸俊治・藤井清七が村上家より購入し、書庫・閲覧室ともに町へ寄付され、現在刈谷市中央図書館村上文庫に保存されている。なお、忠順の書籍購入経路については、購入先や購入代金が記された蔵書目録や、書肆から忠順や篤慶に宛てられた領収書類、書籍への忠順による書込みなどを突き合わせることでわかってくる。
『新修豊田市史』関係箇所:3巻574・611ページ