(モグラるい)
【自然】
食虫目、モグラ科。モグラ類の属する食虫目はモグラ目(広義のモグラ類)と呼ばれることもあったが、現在ではトガリネズミ形目(狭義のモグラ類=モグラ科が含まれる)とハリネズミ形目にわけることも多い。「モグラ」という名前は「モグラ塚」のことを「うごろ」と呼んだことに由来する。市内に生息するモグラ類はヒミズ(写真)、ミズラモグラ、アズマモグラ、コウベモグラの4種である。これらのすべては日本の固有種であり、北海道と沖縄を除く本州、四国、九州と周辺の島々に生息する。ヒミズは山間部の林内や林縁に坑道を掘って生活するが地表にもよく出てくる。ヒミズは他のモグラ類よりも小型であり、歯式は3・1・3・3/2・1・2・3=36。春先には親離れして経験の乏しい個体が捕食獣に捕獲されるものの匂いがきついので死体が放置されることがよくみられる。ただし、フクロウなどの猛禽類は匂いを気にしないので繁殖期にはよく捕獲される。ヒミズの分布は高橋、猿投、石野、小原、足助、旭、下山、稲武の8地区で知られているが、実際にはさらに広域に分布すると考えられる。ミズラモグラは国の準絶滅危惧種、県の絶滅危惧ⅠA類に指定されており、分布するのは世界中で本州のみである。「みずら」という名前は「美豆良(角髪)」という古代の髪型の名前からとられている。ヒミズ以外のモグラ類3種はいずれもいわゆる「モグラの形」をしているが、ミズラモグラはこれら3種のなかでは最も小さく、全長だけをみればヒミズと比較した体長はほぼ同じくらいである。ミズラモグラの歯式は3・1・4・3/3・1・4・3=44。市内での分布は、足助地区大多賀町、稲武地区御所貝塚町、松平地区王滝町で知られているのみである。アズマモグラは本州、四国、小豆島、粟島などに生息し、県の絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。アズマモグラはミズラモグラよりも大きいが、コウベモグラよりはずっと小さくて歯式は3・1・4・3/2・1・4・3=42。市内では、高橋、藤岡、小原、足助、下山の5地域で分布が知られている。コウベモグラは本州の西半分、四国、九州、道後(隠岐諸島)、対馬などの島々に生息する。県内では平野部の畑地などに広く生息しているが、名古屋城の個体群は県の絶滅の恐れのある地域個体群として知られている。市内では、高橋、猿投、保見、石野、松平、小原、足助、下山、旭、稲武での生息が確認されているが、平野部の畑地には本種が広く分布していると考えられる。
『新修豊田市史』関係箇所:23巻599・600ページ