(モモヒキ)
【民俗】〈衣生活〉
下半身にはくモモヒキは男女とも紺木綿で製作した。モモヒキの脚部が身体にぴったり合い、裾が細いので動きやすく、着くずれも少なかった。モモヒキはその人の体に合わせて作るが、人によって大腿部の大きさが違うため難しかった。年配者は尺で測り、型紙なしで裁断してうまく曲線を決めて縫っていたが、身体に合わないと前の部分が開いてしまうこともあった。型紙は各家庭で持っている場合が多かった。山間部では男女ともにモモヒキをはいたが、平野部の女性はほとんど着用していない。山間部では水田に入る時だけモモヒキをはいたという地域や、丈が膝上までの半モモヒキを着用した地域もあった。モモヒキは脚部に密着するので、水田に入った時の足さばきがよくなるが、田んぼの土壌改良が進んでぬからまなくなると、モモヒキは次第に必要がなくなった。既製品の作業用ズボンが売られるようになると、モモヒキの着用者は減少していった。〈衣生活〉
『新修豊田市史』関係箇所:15巻223ページ、16巻220ページ