(もんぜん)
【典籍】
中国・梁の武帝の長子・簫統(昭明太子)の撰による現存する中国最古の詩文撰集。猿投神社には鎌倉時代に写された巻子装の 2 点が残されており、国指定文化財となっている。弘安 5(1282)年に書写されたものは、序文の途中からと巻一が残る。古訓点を有する写本としては現存最古の文献である。正安 4(1302)年に書写されたものも、巻一の一部が残ったもので、書写年代は弘安本よりは遅れるものの、テキストの内容は弘安本より古いものである。日本に残る『文選』は中国・宋の時代に刊行されたテキストを写したものが多いが、猿投神社のものは古鈔本と呼ばれる奈良時代伝来の本文である。原『文選』の面貌をより残していると考えられ、『文選』テキスト生成史にとって貴重な価値を持つ。また、朱筆によるヲコト点、墨筆による傍訓等は豊富で、訓法の変化を知ることができ、国語学史上でも貴重な資料である。
『新修豊田市史』関係箇所:特別号40・102ページ
→ 猿投神社の漢籍