ヤマカガシ

 

(ヤマカガシ)

【自然】

ナミヘビ科ヤマカガシ属に属するヘビ。本州、四国、九州に生息する日本固有種。両生類と魚類を主に捕食する。暗緑色の地色に赤色や黄色、黒色の横帯を持つのを基本とするが、色彩の変異が激しく、赤色のほとんどみられない個体や、全身がほぼ一様な暗緑色の個体もある。腹面には黒色の斑点模様をもつ個体が多い。幼蛇は成体より色彩が鮮やかな印象はあるが、基本的に成体と同じ模様をもつ。奥歯に毒牙をもつ「後牙蛇」として知られ、愛知県下での咬傷死亡例もある。また、これとは別に頸部の皮下に毒腺を持っていることでも知られ(頸腺毒)、この毒は天敵に攻撃されて皮膚が破れた際に防御物質として機能する。また、この頸腺毒は捕食したヒキガエルから得たものであることもわかっており、このためヤマカガシは他種が嫌うヒキガエルを好んで捕食する。市域において、かつてヤマカガシは最普通種であったらしく、平成17(2005)年の豊田市自然環境基礎調査報告書においては「カエルの生息場所には間違いなくいる」「溜池や川の水を引き込む田んぼには必ず生息している」と表現されている。ところが、現在ではこの様相は一変しており、少なくとも平野部では、死体を含めてヤマカガシを見かける機会はまずない。同じく両生類・魚類食のヘビであるヒバカリをよく見かける水田であっても、ヤマカガシはみられない場合がほとんどで、おそらくこの数十年で急速に減少したものと思われる。一方、丘陵地、山地では、現在でも水田や河川の周辺で時折ヤマカガシを見かけることがあるが、それでもかつてのような高密度で生息している地点はなく、全体的に数を減らしている印象がある。県の情報不足種。


『新修豊田市史』関係箇所:23巻549ページ