山風前線地域

 

(やまかぜぜんせんちいき)

【自然】

山風は夜間から早朝にかけて山地から平野部に吹き下りてくる風で、放射冷却によって冷やされた山地斜面に接した空気密度が高まり、重力の方向に流れ出したものである。山風は、日中の谷風によって運ばれた大気を浄化する役目を果たし、ドイツのシュツットガルトでは都市内部に停滞した大気汚染物質を移流・拡散するように、山風の道を設定している。河谷地形の我が国では、海岸部と山地が隣接していることから、日中の海風循環が山地の谷風循環と相互作用をなし、海岸部の大気が河川に沿って谷風前線地域まで移流するのに対し、弱い山風循環が陸風循環と繋がらず、山風前線付近の大気環境が悪化する傾向が明らかになっている。市域の約7割を山林が占める豊田市は、夜間から早朝にかけて山風が吹き下りる傾向にあるが、日中の谷風に比較して弱いため、陸風循環との相互作用はみられない。このため、日中に海風と谷風によって運ばれた大気汚染物質が盆地低に停滞し、大気汚染の原因となっている。

『新修豊田市史』関係箇所:23巻151ページ