山津波  

 

(やまつなみ)

【民俗】〈環境〉

豪雨による土砂災害をいう。綾渡・連谷(足助地区)や稲橋(稲武地区)などではナギといい、災害の後の崩壊地もナギと称した。市域山間部の大半を占める花崗岩の山は表土が浅く、その下にはサバツチと呼ばれる風化花崗岩が堆積していた。そのため植林してもなかなか根付かず、集中豪雨にでもなれば土砂災害の危険にさらされた。綾渡では「ネジリ(尾根尻)やホラセギ(沢塞ぎ。沢口に直角)に家を建てるな」といって、ナギに遭わない屋敷の立地に注意を払うよう言い伝えられてきた。昭和47(1972)年7月の47年7月豪雨災害は、市域山間部を中心に西三河の広範囲に山津波が発生し、河川が氾濫したものである。小原地区の東郷は最も被害が大きかった地区のひとつで、「豪雨で沢がごろんごろんと地響きを立てていた」とされ、多くの人が避難することもできずに家で一夜を明かしている。この豪雨で屋根まで土砂に埋まった家や流失した家も少なくなかった。〈環境〉

『新修豊田市史』関係箇所:15巻6ページ