有舌尖頭器

 

(ゆうぜつせんとうき)

【考古】

両面加工の尖頭器のうち、一端を尖らせ、もう一端に茎状の基部を作り出した石器で、有茎尖頭器ともいう。日本列島全域に分布している。発見当初は土器を伴う事例と伴わない例とがあり、旧石器時代から縄文時代への移行期の石器と考えられたが、本州以南では主に縄文時代草創期中葉の隆起線文系土器とともに出土する例が多いことから、現在では縄文時代初頭の石器として位置付けられている。槍の穂先として用いられた刺突具で、直接あるいは投槍具を用いて投げた槍の穂先と想定されている。全国的にみても東海地方西部は有舌尖頭器を出土する遺跡が多い地域の一つで、市域では36か所の出土遺跡が確認され、56点の有舌尖頭器が知られている(写真:高橋地区寺部遺跡11C区)。発掘調査によって土器や他の石器との関連が把握された遺跡としては、松平地区の酒呑ジュリンナ遺跡がある。酒呑ジュリンナ遺跡では、6点の有舌尖頭器が爪形文の施された微隆起線文土器や木葉形尖頭器・石鏃・矢柄研磨器・掻器・削器とともに出土している。一方、全国的にみても他の遺物とは遊離して出土したり表面採集された事例が多く、市域の他例も同様である。有舌尖頭器は石鏃の普及とともに急速に姿を消していった。


『新修豊田市史』関係箇所:1巻55ページ、7号102ページ

→ 酒呑ジュリンナ遺跡