(よめいりどうぐ)
【民俗】〈人の一生〉
嫁入り道具は結婚後の生活で必要な嫁の私財であり、嫁ぎ先では自分の自由になるお金がなかったことから、一生の間の着るものと収納のための箪笥類を持参した。しかし、大正の頃までは「替えと他所行きの着物を大正箱2つに詰めて持ってきただけ」で、箪笥は「子どもが大きくなってから買ってもらった」という事例も多く、嫁の道具の準備は結婚して落ち着いてから行われていた。戦前期の北(小原地区)では、「いい人は箪笥2本と長持1本。普通は箪笥は1本だった」といい、布団は「シンショウがよいと2組、オゾイと木綿のもの1組」で、自分用ではなくお客が使うものだった。あとは鏡台、盥、針箱、裁ち台、洗面器などを持参したという。荷物は婚礼当日、嫁入り行列と一緒に持参することが多かった。市域山間部ではムラ境で待つ婿方の者と一緒に酒を飲み、通る人にも振舞って引き渡した。昭和30年代にはミシンや洗濯機も持参するようになった。〈人の一生〉
『新修豊田市史』関係箇所:15巻583ページ、16巻532ページ