(りくがい)
【自然】
陸上で生活する軟体動物(貝類)の総称。陸産貝類または陸棲貝類とも呼ばれ、多くは肺で呼吸する。デンデンムシ、カタツムリやマイマイは、陸貝またはその一部を指して使われることが多い。移動が遅く、隔離されて種分化が著しい。一般には民家の庭などにも生息するイセノナミマイマイのような大型のマイマイ属が知られているが、細長いキセルガイ類やオカチョウジガイ、米粒のように小さなキビガイやゴマガイ類、殻が退化したナメクジなどもすべて陸貝である。国内では約800種の陸貝が知られているが、その多くは殻が数mm程度の微小種である。市内には100種近い陸貝が生息する(写真上:イブキゴマガイ、写真中:ヒラヒダリマキマイマイ、写真下:オオギセル)。多くは腐葉土の発達したリター層(落葉落枝層)に生息するため、ふるいで選別してルーペや顕微鏡で観察すると、たくさんの微小な陸貝を発見できる。陸貝は生殖腺が発達するため、殻形態ばかりでなく、生殖腺の形質で分類されることがある。最近は遺伝子分析により、1種とされていたものが複数種に分かれたり、別種とされていたものが同種にまとめられたりすることもある。原始的な陸貝は蓋を持ち、市内には石灰質の蓋を持つゴマオカタニシや革質の蓋を持つヤマタニシが生息する。蓋を持たない陸貝は軟体部を殻の内部に収納し、乾燥が続くとエピフラムと呼ばれるタンパク質の膜を張り、乾燥に耐えることができる。眼は、触角を2対4本もつものでは大触角(後触角)の先端に位置し、触角が1対2本の場合はその基部に位置する。餌は主に植物食で、植物の軟らかい部分や分解の進んだ植物遺骸などを食べる。菌類や地衣類(藻類と菌類の共生体)を食べるグループ、稀に肉食性で他の陸貝を捕食するものや腐肉食性と考えられている種類もいる。
『新修豊田市史』関係箇所:23巻407ページ