(りんしょうじかんぎょうまんだら)
【美術・工芸】
隣松寺(幸町)所蔵。高麗時代至治3(1323)年、絹本濃彩、縦213.0cm、横112.6cm、県指定文化財。観経、すなわち『観無量寿経』に基づき、十六観を描いた変相図である。画面構成は縦に上から、太陽と宝珠を中心に据えた方形の池を描く最上層、楼閣と宝樹の前に阿弥陀三尊が小さく坐勢で描かれる第2層、楼閣と宝樹を前に大勢の立勢の菩薩に取り巻かれた阿弥陀三尊が大きく坐勢で描かれる第 3 層、楼閣を背に宝池と宝樹を前に阿弥陀坐像と観音・勢至菩薩の立像からなる阿弥陀三尊が小さく描かれる第 4 層からなる。画中の短冊形の銘をたどると、本図はこれら 4 層を上から下へと展開する。文様の様式などから高麗仏画とみられる本図は、画面下部の銘文に至治 3 年の年紀がある。同年に制作された高麗仏画の観経十六観変相図である京都・知恩院のものと図像がよく一致し、高麗時代末期に独自に普及していた形式であることがわかる。本図は平成 13(2001)年に盗難に遭い、現所在は不明である。
『新修豊田市史』関係箇所:21巻258ページ