隣松寺銀象嵌鐙

 

(りんしょうじぎんぞうがんあぶみ)

【美術・工芸】

隣松寺(幸町)所蔵。総高25.0cm、幅13.0cm、奥行27.6cm。鉄製鍛造による銀象嵌鐙である。紋板には丸に二引両紋風の透かしを入れ、下部に母衣穴が空けられている。銀象嵌により鳩胸、笑全面には唐草文の地紋に桔梗、蓮文入りの丸文を散らし、柳葉には要所に鋸歯文を置いた唐草文、紋板には唐草文に縁取りされた鋸歯文が描かれており、紋板正面にも、腐食のために判別しづらいが、米字状の連続文が施されている。舌裏には象嵌による地紋はなく、先端部に薄文のみが描かれている。象嵌鐙の多くには、器体のどこかに鐙師や象嵌師の銘を入れることによってその本貫を示しているものが通例であるが、残念ながら本鐙には、制作地や制作者を示す銘文は何もみることができない。所蔵する隣松寺は、徳川家康より寺領安堵状を拝領するなど、将軍家とは深い関わりのある寺院であり、舌長鐙に属す本鐙も、寺伝では徳川家康の父松平広忠(1526~49)の寄進になるものとされる。市指定文化財。

『新修豊田市史』関係箇所:21巻405ページ

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