礫器

 

(れっき)

【考古】

礫の一端を打ち欠いて刃を付けた石器で、pebble tool(英)の訳語。礫の片側から打ち欠かれた片刃礫器(チョッパー)と両側から打ち欠かれた両刃礫器(チョッピング・トゥール)がある。人類史上、もっとも早い段階に現れた石器で、最初にタンザニアのオルドヴァイ渓谷遺跡群の約175万年前の地層から発見され、ケニア北部のトゥルカナ湖東岸のコービ・フォラ遺跡の礫器は約260万年前までさかのぼることが確認されている。さらに、トゥルカナ湖西岸のロメクウィ3遺跡では約330万年前の礫器が見つかっている。厳密には礫を素材とする石器を指すが、大形の剥片を素材とするものも少なくない。礫器には動物の骨や木などを叩き割る機能が想定されているが、打ち欠いてできた鋭い縁をもつ剥片の切削具としての役割の方を重要視する見方もある。礫器は最も早く現れた石器であるが、その後も姿を消すことはなく、のちの時代まで作られ続けられた。このため礫器の出土がそのまま100万年単位の過去の時期を示しているとはいえない。日本列島では後期旧石器時代の細石刃の時期や縄文時代以降にも礫器をみることができ、市域の猿投地区亀首町で採集された「猿投礫器」(写真)はその一種とみられる。


『新修豊田市史』関係箇所:1巻33ページ