鰐口

 

(わにぐち)

【古代・中世】

 寺社の堂前に懸けられ、請願成就を祈念する時に軒から吊るされた紐で打ち鳴らす銅・鉄製の梵音具。円形で内部は空洞になっており、下部の口の開いた形状が鰐の口に例えられたことから、鰐口の名で呼ばれる。上から吊り下げられ、前面に鉦(かね)の緒(お)という布紐を垂らす。それを掴んで振ることで鰐口の表面を打ち鳴らすのである。市域に所在したか、あるいは市域に関係する地名が記された鰐口は、銘文の写しだけが残る場合も含めて、江戸幕府が成立する以前のものが16点確認されている。最も古いのは、明徳元(1390)年12月に下山大林神明宮に施入されたものであるが、現在は白山神社(東大林町)の所蔵となっている。最も時代が下るのは、現在は大蔵町の自治会が所蔵している慶長7(1602)年2月のもので、足助の住人が施入したものらしいが、詳しい経緯は不明である。

『新修豊田市史』関係箇所:2巻651・655ページ、21巻359ページ

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