(わら)
【民俗】〈農業〉
稲作の副産物であるワラ(稲ワラ)は、戦後すぐの頃までは生活必需品を作る素材として貴重であった。ワラ草履やスガイ(括り紐)、ワラを綯って作る縄、編んで作る俵などは日常に欠かせなかった。昭和20年代頃までは、ビク、カマス、ミノ、コモなどは農家なら誰でも自家で作ったものという。焚き物に不足した市域平野部では、ワラは燃料としても重宝した。また、ワラは牛馬の飼料としても必要であり、マヤ(厩)に敷けばマヤゴエ(厩肥)の素材となり、そのまま小切りにして田に敷き込むこともあった。ワラは収穫分すべてが自家で消費されていたといえる。戦後、農家が家畜を飼わなくなり、購入肥料や安価な繊維製品が普及するに伴い、稲ワラは家庭で使われなくなっていった。コンバインによって稲が収穫されるようになると、ワラは刻んで肥料として田に撒かれるようになり、乾燥のためのハザ掛け、保存のために田に作るワラニゴ(稲積)の姿も減少している。〈農業〉
『新修豊田市史』関係箇所:16巻100ページ