雷電池の「雨乞い行事」にまつわる話は、見方をかえれば、池の水の源である地下水が不安定なことを示している。長い日照りがつづけば水が枯れることは、雷電池をうるおしていた地下水のかん養状況を暗示するものであり、ひいては鶴ケ島の地形・地質を解明する糸口となるものである。
鶴ケ島周辺には、脚折の雷電池のように地下水の湧きだし口―湧水―がいくつか知られている。高倉の池尻池の上流の山林中に湧きだす「おかねが井戸」、三ツ木の上流の逆木(さかさぎ)池、太田ケ谷沼上流の農業大学校裏手の山林から発する小渓流、藤金の給食センター近くの「まんざいろく」などがその代表である。これらの湧水には、それぞれ古くから伝わる伝説があり、村人の生活と深く係わってきたことがしのばれる。
現在は完全に埋め立てられてしまった「まんざいろく」も、かつては湿田地帯として知られていたところである。水田にはいると隣の水田がゆれ、田のあぜをゆすると数枚先のあぜがゆれるほどの軟弱な湿田であった。水のなかに田が浮いているという表現が適切なほど水の多い「まんざいろく」では、稲作も田植などおこなわず、直播(じきま)きがおこなわれていた。また日照りのつづく年などでも「まんざいろく」の水は枯れることなく、水不足に悩む近所の農民たちが雷電池の雨乞い行事をならって、ここまで水取りにきたという。