二つの湧水帯

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鶴ケ島の湧水の位置を地形図に落としてみると、二つの湧水帯に区分できそうである。
 その一つは、ほぼ標高四五から五〇メートルの等高線にそってみられるもので、「おかねが井戸」、農業大学校裏手の湧水、池尻池、逆木池などがこの湧水帯に含まれる。この湧水帯をとりあえず「上流湧水帯」と呼んでおこう。

おかねが井戸

 上流湧水帯に含まれる湧水の特徴は、小渓流沿いの小規模な湧水であって、その水を溜池に集めて用水に使用している例が多い。池尻池、逆木池などはその例である。逆の見方をすれば、不安定な水源を溜池をつくることで比較的安定な水源に変えたともいえる。
 もう一つの湧水帯は、標高三五メートルと四〇メートルの等高線のあいだの関越・自動車道沿いにみられたもので、雷電池や「まんざいろく」がこの湧水帯に含まれる。さきの上流湧水帯よりも下流にあることから「下流湧水帯」と呼ぶことにしよう。
 この下流湧水帯の特徴は、上流のものと比較して規模も大きく、「まんざいろく」の例でもわかるように、比較的安定した水源であったと思われる。それは上流湧水帯のように溜池がつくられず、そのまま用水源として使用されていたことでも理解されよう。ただ比較的安定していた水源であっても、長い干天がつづけば水は枯れるのであって、そのうえ溜池などの水の管理機能がなければ、すぐにでもその影響が農作業に現われてくるのは当然のことである。このことが、雷電池に「雨乞い行事」が生まれ、ひきつがれた理由の一つと考えたらいかがであろうか。